【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか?/Hanadaプラス

Hanadaプラスの書評連載【読書亡羊】にて、〈初めて投票した時のことを覚えていますか? 〉と題し、マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)を取り上げました。

投票の政治心理学―投票者一人ひとりの思考に迫る方法論

本書の特徴は、「選挙の機能」の捉え方にある。伝統的な政治心理学における投票行動研究では、「政治の代表者の選出」をはじめとした制度に基づく機能に焦点が当てられてきた。しかし本書では、選挙には投票者を中心に据えた機能も備わっている、と考える。選挙は政府と市民、さらには市民同士の交流の機会となっていて、そのことが確かに個々の投票者に影響を与えている―これがその考えの中核である。著者らは選挙のそうした影響を知るため、「行動」「経験」「解決感」という三本の柱を分析の軸に据えた斬新な方法論を設計し、世界6ヵ国(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ジョージア、南アフリカ共和国)で大規模な調査を行った。対象とした選挙の中には、あのEU離脱国民投票や2016年のアメリカ大統領選挙といった、世界中の関心を広く集めた選挙も含まれる。実際に行った調査の方法はきわめてユニークである。自己報告型データ(標準的な質問票調査、選挙期間の前後の日記や、投票直後のインタビューなど)、観察データ(投票立会人による観察報告)、そして実験型データ(模擬投票のシーンを撮影し、その映像を分析するなど)と三方向から多彩な情報を収集。パーソナリティ特性や選挙の記憶、そして選挙のさまざまな段階で抱く感情などに着目して分析している。本書は従来の研究における想定を覆し、新たなスタンダードとなりうるか。国を問わず、誰もが関与しうる選挙。その大規模で普遍的なイベントをより深く理解するための、挑戦的研究。

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